Essay エッセイ
テッサロニキに降り立つ
2022年5月18日の夕方、私は父とともにギリシャ北部の都市テッサロニキに到着しました。
第2の都市とされるこの街を訪れるのは、10年以上前に父と来て以来でしたが、その時の記憶は曖昧で、私にとってはほとんど初めてのような感覚でした。
予定よりも早く空港に到着したため、レンタカーの担当者がまだ来ておらず、外で20分ほど待つことになりました。
空港の外は風が強く吹いていましたが、日差しは強すぎず、暑さに耐えられないほどではありませんでした。
やがてレンタカーの担当者が到着し、空港近くの事務所で手続きを済ませます。運転は父が担当し、車を受け取った私たちはそのままテッサロニキ市内へ向かいました。
ホテルに到着し、部屋から外を見下ろすと、集合住宅が立ち並ぶ街並みが広がっていました。ギリシャの都市部ではこうした建物が多く見られ、晴れた日にはバルコニーで食事をする光景も日常の一部です。
一方で、路上駐車の多さも印象的でした。道路の至るところに車が停められており、その分道幅はさらに狭くなっています。運転するには決して楽な環境ではありませんが、それもこの街のスタイルだと感じました。
アテネに2年間住んでいた経験のある私にとって、テッサロニキはどこか似ていながらも、少し違う空気を持っていました。治安が悪いわけではありませんが、どこか緊張感のある雰囲気が感じられました。
ホテルに到着して間もなく、父は外へ探索に出かけていきました。コロナ禍以降、一度もギリシャに帰れていなかった父にとって、この土地に戻ることには特別な意味があったのだと思います。私は部屋に残り、少し休むことにしました。
約1時間後、私たちはブドウの葉の生産者であるカザキスさんと合流し、一緒に流行りのレストランへ向かいました。
訪れたのは、アテネで人気のシーフードレストランで、最近テッサロニキに2店舗目を開いたばかりとのことです。店内にはフィッシュセラーがあり、そこから自分たちの食べたい魚を選ぶスタイルでした。
魚のことはあまり分からなかったため、選ぶのはカザキスさんにお任せし、私たちは外のテラス席に座りました。店員からワインリストを受け取り目を通すと、そこにはギリシャワインのみが掲載されていました。そのラインナップに驚きつつも、自分たちが日本に輸入しているワインを見つけ、少し嬉しい気持ちになりました。
私たちはヴィディアノ100%のワインを選びました。
料理は前菜から順に提供されました。スープやサラダをはじめ、いくつかの料理を取り分けながら食べ進めていきます。いずれもシンプルな構成でありながら、素材そのものの味わいがしっかりと感じられる内容でした。
フィッシュセラーで選んでもらった魚も提供され、その場でいただきました。自分たちで食材を選ぶスタイルと、それをそのまま料理として味わう流れは、ギリシャの食文化をそのまま体験するようなものでした。
テッサロニキに到着してからの一日は、空港での待ち時間から始まり、街の風景を眺め、そして生産者とともに食卓を囲む時間へと続いていきました。今回の訪問の最初の一日が、そのままの流れで静かに形になっていきました。
















さくらとこころ 第7章|桜の下に残した心 ― 日本という“もう一つのふるさと”