2023年8月。

あっという間に8月も終わりに近づいていますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
私は、8月1日から15日までの約2週間、父とともにギリシャへ出張に行ってきました。
短い期間ではありましたが、一日一日の内容がとても濃く、気持ちとしては数か月滞在していたかのような感覚です。
多くの発見と学びがあり、改めてギリシャという国の奥深さを実感する旅となりました。

今回の行程は、
アテネ → サントリーニ島 → クレタ島 → ケファロニア島 → サモス島 → アテネ(エヴィア島)と、
東・西・南を巡る移動の多い旅でした。

日本からはシンガポールを経由し、アテネへ。
日本からシンガポールまで約6時間半、そこからアテネまで約11時間。
アテネ到着後はそのまま国内線に乗り換え、約55分で最初の目的地であるサントリーニ島へ向かいました。

サントリーニ島は、エーゲ海のキクラデス諸島南部に位置する、小さな島です。 面積は約73平方キロメートル、人口は約13,000人。
ティーラ島(本島)を中心に、ティラシア島、ネア・カメリ島、パレア・カメリ島、アスプロニシ島の5つの島から構成されています。
現在の独特な地形は、紀元前1628年頃に起きた大規模な海底火山の噴火によって形成されました。
もともとは一つの島だったものが、噴火によって地中に空洞が生まれ、その部分が陥没することでカルデラ地形となり、現在の姿になったとされています。
島の端に立つと、その地形を実際に感じることができ、島全体を見渡すことができます。

このように世界的にも非常にユニークな環境を持つサントリーニ島は、ギリシャワインにおいても極めて重要な産地です。
その理由のひとつが、ギリシャを代表する土着品種「アシリティコ」の原産地であること。
アシリティコは、非常に暑く乾燥した環境でも育つことができる一方で、高いアルコールとバランスの取れたシャープな酸を維持できる、非常に珍しい白ブドウ品種です。
また、アロマティックな品種というよりは、テクスチャーや構造、抽出感を重視するタイプの品種であり、サントリーニ島では特にミネラル感と凝縮感の強いワインを生み出します。
同じアシリティコでも、他の産地で栽培されたものはより果実味が前に出て、構造が軽やかになる傾向があります。
つまり、サントリーニ島という土地だからこそ生まれる味わいがあるのです。

その背景には、この島特有の自然環境があります。

まず土壌。
サントリーニ島の土壌は、火山活動によって形成された火山岩質と砂質の土壌で、水分保持力が極めて低く、有機物もほとんど存在しません。
この環境は、ブドウの大敵であるフィロキセラが生存できない条件でもあり、多くのブドウ樹が接ぎ木ではなく自根で育っています。そのため、樹齢の高い古木が多く残っているのも特徴です。

次に気候。
夏は暑く乾燥し、冬は比較的温暖な典型的な地中海性気候。降水量は非常に少なく、特に夏はほとんど雨が降りません。
水分は主に冬の降雨と朝の霧によって供給され、それが多孔質の土壌に蓄えられます。
また、島では常に強い風が吹いており、この風は一方でブドウを傷つけるリスクもありますが、同時に成熟をゆっくりと進め、酸を保つ役割も果たしています。
こうした過酷な環境に適応するために生まれたのが、「クルーラ」と呼ばれる独特の仕立て方です。
ブドウの樹をバスケット状に編み込むことで、強風や強い日差しから果実を守るこの方法は、サントリーニ島ならではの栽培技術です。

自然環境と人の知恵が組み合わさることで、この土地ならではのワインが生まれているのだと実感しました。