Essay エッセイ
フンディ エステート来日 ― クシノマヴロとともに過ごした時間
ギリシャ北部に位置するナウサは、小さく穏やかな村です。
海や島のイメージが強いギリシャの中では少し異なり、緑が多く、のどかな風景が広がっています。
フンディ エステートは1992年に設立されたワイナリー。
北ギリシャを代表する黒ブドウ品種「クシノマヴロ」から、白・ロゼ・赤ワインを生産しています。
クシノマヴロという名前は、ギリシャ語で「クシノ=酸っぱい」「マヴロ=黒い」という意味を持ちます。
その名の通り、この品種から造られるワインは酸が高く、タンニンも豊富。
古くからギリシャ国内の名産地として知られ、他国への輸出も盛んに行われてきました。
ナウサのブドウ畑は、ヴェルミオ山の麓に位置しています。
写真の左に見える小さな建物がナウサの町で、その背後には広がる自然と畑の風景が続いています。
フンディ エステートでは、昔からの伝統的な製法を用いて赤ワインが造られています。
ナウサにおける伝統的製法とは、比較的高い温度で発酵を行い、タンニンやアロマをしっかりと抽出し、その後樽熟成と瓶内熟成を経るというものです。
この工程を経ることで、しっかりとした酸とタンニンを持ち、ボトリング後も20年以上熟成可能な赤ワインが生まれます。
今回来日されたのは、2代目のヨルギア・フンディさん。
せっかくの日本ということで、まずは一緒に日本食を楽しみました。
訪れたのは表参道のGENTLEさん。
1階はイタリアン、地下は寿司バーという少しユニークな構成のお店です。
東京では、a La Bouteilleさんにてワイン会を開催しました。
ラインナップは、白・ロゼ・赤、すべてクシノマヴロ100%。
なかなか見ることのない、かなりマニアックな内容です。
この日の料理も印象的でした。
クシノマヴロが持つオリーブのニュアンスに合わせるため、フレンチで一般的に使われるバターはあえて使わず、オリーブオイルで調理。
ワインに寄り添う形で料理が組み立てられていました。
設立当初から変わらない製法で造られているナウセア フンディについて、ヨルギアさんが説明している姿も印象的でした。
最後には、お店の壁にメッセージを残してくださり、その時間の余韻がそのまま形として残りました。
夜のワイン会に備え、昼間は倉敷を訪れました。
日本庭園や江戸時代から残る建物など、日本の伝統的な風景を見ながら過ごす時間。
ヨルギアさんもとても満足されている様子でした。
ギリシャをモチーフにしたホテルで、瀬戸内海を望む立地にあります。
部屋から見える景色を前に、ヨルギアさんは「ギリシャを思い出す」と話していました。
会場のセッティングも美しく、瀬戸内海を眺めながらのワイン会となりました。
今回のワイン会で特に印象的だったのは、同じクシノマヴロ100%でありながら、畑の違いによって表現が変わる2つのワイン。
●ナウセア フンディ
●クティマ フンディ
使用品種も醸造方法も同じでありながら、異なるのはブドウが育つ土壌です。
ナウセア フンディは、複数の粘土質の畑のブドウを使用。
粘土質の土壌では、酸とタンニンがよりアグレッシブになるといわれています。
一方、クティマ フンディは、単一の砂質土壌の畑のブドウを使用。
砂質土壌では、酸とタンニンがより柔らかく表現されます。
同じ品種、同じ造りでも、畑によってここまで違いが生まれる。
その違いを食事に合わせて楽しむことができるのも、ワインの面白さの一つだと感じました。
クシノマヴロという品種、ナウサという土地、そしてそれを造る人。
それぞれが重なり合いながら、今回の時間が形になっていきました。


















初来日で感じたこと ― パパヤナコスとサヴァティアノ